想定
目が覚めると、外は嵐の真っ只中。電車は止まっているであろう。ここまでは想定の範囲内。
会社には午後から行こうかと考えながら顔を洗っていると、左目が異常に腫れていることに気が付いた。鏡で見ると、両目が真っ赤だ。
台風で遅刻するつもりだったが、通院での遅刻に急遽変更。どちらにせよ結果は一緒だ。
以前お世話になったことのある眼科は、残念ながら休診日。ネットで調べ、横浜駅にある眼科へと向かった。
診察の結果、ものもらいの初期症状だそうだ。二種類の目薬を使えば、数日で治るらしい。
しかし、医師は他にも気になる点があるらしく、時間があれば検査を受けるように勧めてきた。
急いだところで台風と仕事が待っているだけだ。せっかくの機会だから、ゆっくりと検査を受けていこう。
なにやら高価そうな機器が並んでいる。次から次に検査を受け、結果を待つ。
名前を呼ばれ、医師の元に戻る。
『左眼に緑内障の疑いがあります。来月、再検査をしましょう。』
これは想定外である。正直ショックを隠せなかった。全く自覚症状が無いのだが、既に左眼の一部は見えていないらしい。
治すことはできないようで、今後は症状の進行を止める戦いになるようだ。
職場までの電車内で、何度ため息をついただろう。
上司に報告をし、普段と変わらず仕事をこなしたが、あまり記憶が無い。
落ち込んでいても仕方が無い。左眼がダメなら右眼があるさ。それに、進行が手遅れになる前に判明しただけ幸せだと考えよう。
そういえば、私が尊敬する故・田山幸憲氏も、晩年は飛蚊症という眼の病に苦しんでいた。私は一体、どこまで田山さんの背中を追い掛けるのであろうか。



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